「どの内装材を使うか」は、デザインを決める話だと思われがちです。しかし法律の世界では、それは「火災のときに人が逃げられるかどうか」を左右する話です。日本の建築基準法には内装制限という仕組みがあり、建物の用途・規模に応じて、壁や天井に使える内装材の防火性能を義務づけています。
内装制限の3つの等級
日本壁装協会(WACOA)の整理によれば、内装材の防火性能は「加熱に耐える時間」で3つに分かれます。(日本壁装協会 防火性能)
| 等級 | 加熱時間 | 大臣認定の記号 |
|---|---|---|
| 不燃材料 | 20分 | NM |
| 準不燃材料 | 10分 | QM |
| 難燃材料 | 5分 | RM |
いずれの等級も、加熱試験のあいだに次の3つを満たすことが求められます。
- 燃焼しないこと
- 防火上有害な変形・溶融・亀裂などの損傷を生じないこと
- 避難上有害な煙やガスを発生しないこと
3番目に「煙・ガスを出さないこと」が明記されている点に注目してください。日本の防火は「燃えにくさ」だけでなく「避難を妨げないこと」まで含む考え方なのです。これらの性能は国土交通大臣の認定(不燃は告示1400号、準不燃・難燃は告示1401号などに基づく)で確認されます。どの建物にどの等級が必要かは、内装制限の条件として用途・階数・床面積ごとに定められています。(内装制限の条件)
準不燃を測る試験 — コーンカロリメーター
準不燃かどうかは、感覚ではなく数値で判定します。用いられるのがコーンカロリメーター試験で、国際規格ISO 5660-1に対応します。(CERI コーンカロリメーター試験)
サンプルに一定の放射熱を当て、燃えたときに出る熱量(発熱量)を計測する試験です。準不燃材料の場合、加熱10分間の総発熱量が8MJ/㎡以下であることなどが基準になります。ここで強調したいのは、準不燃は「不燃(=燃えない)」ではないという点です。準不燃は10分、不燃は20分という加熱時間の差があり、準不燃はあくまで「一定条件のもとで発熱を抑える」等級であって、絶対に燃えない材料ではありません。
3種の材料を同条件で加熱した比較試験。等級の差は、燃え方・発熱・煙の出方の差として現れる。
なぜ区分が命を分けるのか — 歌舞伎町ビル火災
区分の重要性を、痛ましい事例が示しています。2001年、東京・新宿歌舞伎町の雑居ビルで発生した火災では、44名が亡くなりました。消防庁の資料は、被害が拡大した要因として、階段室に多くの物品(可燃物)が置かれ、そこが煙と炎の通り道になっていたことなどを挙げています。(消防庁 資料)
避難経路である階段が「燃料」と「煙の通り道」を兼ねてしまえば、内装材の防火性能がいくら高くても効果は薄れます。逆に言えば、避難経路まわりの内装を防火区分に沿って正しく選ぶことは、この教訓に直接こたえる基本の一手です。区分は書類上の記号ではなく、逃げる時間を稼ぐための設計条件だと捉えるべきです。
素材選びの実務として
YEILDECOが流通するPVCフリー内装フィルムは、韓国のKFI(韓国消防産業技術院)による準不燃材料の認定を受けています。一方で、日本国内で使う際の大臣認定(QMなど)は韓国認定とは別の制度であり、別途の取得・協議が前提になります。ここを「日本の大臣認定を保有している」と混同しないことが、施工店・設計者としての安全側の姿勢です。
日本のプロジェクトでの適用可否、必要書類、区分ごとの対応可能範囲については個別にご相談ください。→ YEILDECOの製品情報(日本語)
